
いよいよ外来診療でも投与開始 抗体カクテル療法は、新型コロナウイルス治療の救世主となるか?
産業医ラボ.com専属管理薬剤師が解説します!
■CHECK POINT!
①抗体カクテル療法とは?
②認可済みの新型コロナウイルス治療薬は、どの程度の症状に対応する?
③抗体カクテル療法の効果と問題点
8月に入っても新型コロナウイルスの新規感染者が一向に減る気配を見せない第5波のなか、都のモニタリング会議では総括コメントで「陽性者数の急増が制御不能な状況で、災害レベルで感染が猛威を振るう非常事態だ」と心配な日々が続いています。そんな中、厚生労働省は7月に承認した抗体カクテル療法の使用条件を緩和して自宅療養者へも対応できるように外来診療での投与を認める方向で調整中であると発表しました。そして8月28日より大阪府では外来診療でも投与が開始された「抗体カクテル療法」について産業医ラボ.com専属の管理薬剤師が詳しく解説いたします!
■抗体カクテル療法とは?
新型コロナウイルス治療薬でカシリビマブとイムデビマブの2種類の人工抗体を同時に投与する方法です。
この2種類の抗体は、もともとは新型コロナウイルスに感染して治った人の免疫細胞から作られたものです。
投与された2種類の抗体はウイルスの表面にある突起部分「スパイクたんぱく質」に結合し、細胞への侵入を阻害して増殖を防ぎます。異なる抗体を投与することで、変異ウイルスにも対応できると期待されています。
※カシリビマブとイムデビマブはオミクロン株への非推奨と厚生労働省の見解あり(2021年12月追記)
■認可済みの新型コロナウイルス治療薬は、どの程度の症状に対応する?
抗体カクテル薬は軽症に対応する初めての薬!!なのです。
現在(2021年9月)日本国内で承認されている治療薬は4種類あります。
これらの治療薬はそれぞれ作用機序が異なり、それぞれ患者の症状に応じて使われます。
抗体カクテル療法(商品名:ロナプリーブ):ウイルスの働きを抑える
デキサメタゾン:ウイルスによる炎症を抑える
バリシチニブ :ウイルスによる炎症を抑える
レムデシビル :ウイルスが増えるのを抑える
抗体カクテル療法は、初めて軽症から中等症Iまでに対応した薬剤です。
レムデシビルは中等症Iから重症まで、デキサメタゾンやバリシチニブなどは酸素吸入を必要とする中等症IIから重症で使われます。
つまり今回承認された抗体カクテル薬は初めて軽症者へ投与できるお薬になります。通常、成人あるいは12歳以上かつ体重40kg以上の小児に2種類の抗体を混ぜておよそ1時間かけて点滴します。ただし効果があるのは発症してから7日以内です。
■抗体カクテル療法の効果
海外の臨床試験では入院や死亡のリスクを70%減らす効果が認められています。国内でも治療に用いてきたいくつかの医療機関では基礎疾患や生活習慣病などの重症化リスクのある人を対象に投与を行なったところいずれも重症化することはなく、数日で熱が下がった患者も認められています。そもそも抗体は細胞への感染を阻害するのですから、できればウイルスが細胞に感染する前、あるいは感染した直後のウイルスの量が少ないうちに投与するのが最も望ましいのではないでしょうか。できれば陽性が確認された数日以内が望ましいところです。
■抗体カクテル療法の問題点
副作用は比較的少なく投与後24時間以内に過敏症あるいはアナフィラキシーなどのアレルギー反応が現れる可能性があります。しかし日本ではつい先日までは入院患者のみの投与が認められており、自宅療養などの軽症者へは認められていませんでした。これらの副作用にはヒスタミン薬やステロイドの投与で対処できることを考えるとすみやかに外来や自宅療養者へ投与できるシステムを構築すべきと思います。実際に点滴だけでなく皮下注射で効果があるという論文も出されています。
■認可済みの新型コロナウイルス治療薬は、どの程度の症状に対応する?
新型コロナウイルスへの対策はワクチン接種の方が高い効果があります。新型コロナ発症予防効果はファイザー製でおよそ95%、モデルナ製で94%とされています。ワクチン接種できれば自身の体内で抗体を作成できるので新規感染者も減ります。しかしこれだけでは不十分で、このコロナカクテル療法が予防や初期軽症者に速やかに使えるようになれば重症者も減り、大きな戦力になることに間違いありません。
この原稿を上げている中にも中外製薬は濃厚接触者などへの予防投与、皮下注射の用法も申請を始めたというニュースが飛び込んできました。流通量とともに早期に一般外来などで投与できることを期待しています。
出典:厚生労働省 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き-第5.2版
■ 執筆 ■
竹内 敦子
たけうち あつこ
株式会社メレコム
薬事センター管理薬剤師
昭和55年に薬剤師免許を取得。
その後、医学部臨床病理学で生化学研究室勤務。
後、消化器内科学にて肝炎ウイルスの遺伝子解析、がん腫瘍マーカーなどの研究に携わる。
現在は、同グループ会社 株式会社MeRecomの薬事センターにて
専属薬剤師として活躍している。
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