COLUMN

産業医の役割と周知の必要性について-chapter 1-

社員の心の問題にしっかり対処するために必要なのはコミュニケーション

中川 先生方の感覚としてはそういったメンタル面できちんとしたケアが必要だと感じる人の割合は、どれほどになりますか

三邊 1割くらいはいると感じています。しかし問題が出てくる人と出てこない人がいるので、実際に心の問題が出てくるのは5%ほどです。

中川 しかし、それをなるべく多く救わないと本来のメンタルヘルスの予防策とは言えないということですよね。

三邊 そうですね。

川上 そのためには、職場での環境対応や、本人の業務調整が必要な場合があります。精神科の先生が疾患だけを診て、この人は事務作業だけが望ましいとか、何かの作業がいいよとかアドバイスはいただけますが、そこから実業務に落としながら詰めていくことができるのも、産業医なのです。
産業医がいると、職場の業務を理解していますので、この人はAセクションじゃなくてBセクションのほうが良いですよなどという調節も可能になります。


中川 産業医は職場の環境や内情を把握しながら業務を行っているということですが、実際のところどこまでが産業医の範囲なのでしょうか。

三邊 産業医によって範囲は異なります。だからこそ、会社もぜひ産業医とコミュニケーションを取って欲しいと思います。少なくとも月1回の面談など、訪問のノルマがあるので、その時に人事からも、コミュニケーションを取ることは難しくないと思います。

川上 それは産業医側も同じです。産業医側からもしっかりと職場環境の改善に寄与していかなければならないと思います。ですので、産業医ラボのような形で産業医と企業を繋ぐというのは大変重要な役割だと思います。

中川 弊社では企業と産業医を単純に繋げるだけではなく、メンタルヘルスの相談に乗れるように、精神保健福祉士などのカウンセラーもいて、企業からの相談業務を行なっています。こうしたコミュニケーションを取っているおかげで、産業医が会社を訪れた際に、細かな情報もお互いに聞きやすいと言っていただいています。


ストレスフルな環境は 会社にとってもデメリットが大きい

川上 社員が体だけではなくて心の健康の問題を抱えて休むことで、会社にとって損失となるケースが増えています。現代は非常にストレスの多い社会です。企業が組織を回してく上で、社員が心に問題を抱えるようになり、逆に損失となるダメージを受けることが多くなっているのが実情です。

中川 会社も損失を受けていますし、従業員側も少し辛く、双方にデメリットがありますよね。

川上 そうですね。現代の様々なストレスが多い環境で働くと、次第にそのストレスは溜まります。メンタルヘルスを大切にするということは、非常に重要なことなのです。

中川 メンタルヘルスは会社と従業員の双方にとって必要なものなのですね。
では実際に、従業員はどういったところにストレスを感じているのでしょう。先生は産業医をされていて、どのように感じていますでしょうか。


川上 やはり一番は職場の上下関係です。簡単に言うと人間関係ですね。

中川 それは、上司から強く言われるなどということなのですか。

川上 上司からというのもそうですし、あとは昇進をすると、上からと下からと言われます。

中川 中間管理職ということですね。

川上 そうです。昇進したのは良いのだけど、今度は上から指示を受けたことを、下に指示を出さければいけません。自分が指示を受けて仕事をするのは得意だったのですが、部署をまとめるということが実は苦手という方もいます。

中川 なるほど。指示を受けて業務として行っている分にはすごく良かったけれど、調整業務となると、少し難しいと感じる人もいるということですね。

川上 また、そういった環境の変化についていけないといったケースもあります。他にも上司との人間関係だけではなくて、同僚や部下との人間関係だといったこともあります。

中川 部下との人間関係をストレスに感じてしまうケースもあるのですね。

川上 今は色々なルールの改正があり、多様化も進んでいますので、例えば、派遣会社を経由して入ってくると、自社のルールが通用しないということもストレスの要因となります。

中川 なるほど。

川上 仕事の進め方や働き方が多様化しているだけに、そこでの姿勢をどうするのかといったことや、変化に対応することなど、様々なことに悩む人が出てきているのかもしれません。

中川 やはり、先生が産業医として活動されていて、ストレスを抱える人は、中間管理職の人が最も多いですか。他にも例えば、新しく入ってきた人や、女性はいかがでしょうか。

川上 勿論、新入社員の人も、学生時代と大きく環境が変化していることがありますし、やはり変化というのは大きなストレスの要因の一つです。

中川 変化がストレスの要因ですか。そうとなると、時期的なものもありそうですね。

川上 はい。確かに時期的なものには注意が必要です。

中川 時期的に多いのはいつでしょうか。環境が新しくなる人が多くなる4月なのか、少し慣れる9月頃なのか。学生ではないので夏休みはありませんが、お盆の長期連休が明けたころにストレスを感じることが多くなるのか。あるいは、季節性で冬が多いといったこともありますか。

川上 そうですね。さらに会社の繁忙期が重なるとストレスフルな状況になります。


社員をストレスから守るには 上司・産業医のそれぞれの役割分担

三邊 話をぶった切るようですが、産業医というのは、実はメンタルの専門家じゃないのですよ。

中川 核心部分を突きましたね。

三邊 メンタルヘルスというと難しい。診断や治療については精神科医のほうが詳しいのですが、産業医は、少し心に問題を抱えた個別の従業員に関わっていくことが仕事です。産業医は精神科との架け橋になっているのだと考えています。

中川 なるほど。

三邊 病院に来た患者さんを診るだけでは、どのような環境で働いているかは見えてきません。


川上 個々の部署に、どういう人がいて、どういう業務をしているのか。または、その部署が最近新たなこういう仕事するようになって、さらに忙しくなったからこの人は病を抱えたなどという、職場の背景を理解している医療スタッフがいるというのは、とても重要なことですね。

三邊 確かに、それによって対応の方法も変わってきます。もともと病を抱えやすい気質がある人と、そうではなくて過度にストレスがかかった人が病を抱えた場合で対応が変わります。過度にストレスがかかった人には職場を変えることなど、そういうことが産業医であればできます。しかし、社員が産業医の診断を受けずクリニックに行ってしまった場合は、薬を出しましょう、経過を観察しましょうで、会社側へのフィードバックが全く働かないので双方にとってデメリットになってしまいます。

中川 なるほど。職場環境に社員のメンタルが関与しているので、その部分をしっかり見極める必要があるということですね。

三邊 クリニックに行くこと悪いというわけではなく、クリニックとうまく連携した産業医がいる上で、クリニックを紹介する。そういう連携があった方が良いということです。

川上 これはメンタルヘルスで使われている言葉なのですが、みる・きく・つなぐ、という言葉があって、上司が社員を、みて、話をきいて、産業保健スタッフにつなぐ役目をしているのです。

中川 見る・聞くのは上司の役割なのでしょうか。

川上 そうですね。上司の場合もありますし、それが産業医の役割であることもあります。

三邊 社員のストレスについて見極めるために、私が産業医を通して感じているのは、社員と同じ部署の上司とのコミュニケーションが重要だということです。あとは、総務の健康管理担当、健康診断担当の人が産業医としっかり繋がっているかで会社の健康度合いが違ってくると感じています。

中川 しかし実際には、従業員規模が49人以下だと、産業医もいなければ、会社として対応ができていないケースが多くありますよね。そうした場合、健康診断の事後の措置を含め、手薄になってしまいがちですが先生方はどうお考えですか。

三邊 従業員が49人以下で産業医を入れている会社というのは、最近は増えてきていますが、まだまだ多くはないのが現状です。そうした場合には、メンタルや健康問題に疑問に思った社員に対して、上司などが産業医に診断してもらうようす促すというのは難しいと思います。
 50人以上で産業医がいる場合には、みる、きくの部分が上司で、そこから産業医につないでもらうという流れが最も効果があるようです。ですから会社の中でも産業医が存在することをしっかり周知してもらわないといけません。

中川 会社としても、産業医の存在や役割を社員に知ってもらうことでメリットがあるということですね。

三邊 僕の事例ですが、メンタルの面談をしていると、メンタルに問題を抱えている部下の人がいる、ということで上司もかなりそのことに時間を割かれたり、上司自体がストレスに感じてしまったりします。
 部下の「私辞めたいんです」みたいな相談をずっと上司一人が受けていると、その上司も対応の方法が分からずに悩んでしまったり、気が滅入ってしまったりします。そういう時に、産業医の先生に相談できるルートがあると、会社の仕事の効率は格段に上がります。相談を受けている上司の時間も業務時間ですから。
 上司にはきちんと会社の業績に繋がるような仕事をしてもらう。産業医との役割分担です。そういう意味では、やはり産業医がいるというのは心強い。

川上 実際に産業医ですと、状況を紹介状に書くことができるので、そのまま病院に紹介もできて、より忠実に精神科の先生にも理解してもらうことができます。

中川 もし、産業医がいなければ、上司は単純に精神科に行ったほうがいいよという提案で終わってしまいます。

川上 そうですね。

三邊 精神科に通院していたとしても、会社がそのフィードバックを受けることができないので、従業員が休みをとっても、どのような状況で休んでいるのかを、会社は把握できないという問題が出てきます。休職している従業員と電話での連絡をする場合でも、産業医面談とか産業医にきちんとバックするという仕組みがあった方が、企業側としても、休職して復職したい従業員にとってもメリットがあると思います。

中川 やはりそうですね。

川上 病院に行ったのは良いのだけど、どのような治療をしているのかは、会社が病院に聞いても教えてもらえません。産業医は、勿論本人の同意を得てのやりとりとなりますが、治療の状況などの情報を共有することで、精神科の先生とも関係性が良好になります。繋がることで会社としても従業員をケアできるようになるのです。

中川 そうですね。その方がお互いにメリットがあるということですね。従業員としてもいつ戻っていいかの判断が難しいですし、会社の状況もわかりません。会社としても、いつ戻ってくるのかわからない従業員を抱えてしまうことになります。そういう意味でも、両者の間に専門家がいるということは大事ですね。


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