COLUMN

マスク着用によるリスクとその対処法について

またもや1都3県に緊急事態宣言が発令される等、昨今の生活において欠かせないものとなっているマスク。未だ新型コロナウイルスのワクチンや治療剤が普及されていない現状下において、マスク着用は感染から身を守る為の予防策として非常に重要視されております。

しかし、マスクを毎日着用しているが故に、コロナ禍以前より実は身体にかかる負担が増えてきているのを、皆さまはご存知でしょうか?実は、精神的なストレス、頭痛や吐き気、過呼吸、肌荒れなど、様々な形で身体に支障をきたします。

今回のコラムでは、マスクを着用することで発生し得る、身体における様々なリスクと、その対策法について詳しく解説してみたいと思います。

リスク①「不感蒸泄」:季節による湿度変化とマスク着用との関係


■「不感蒸泄」とは
まず、「不感蒸泄」とは、発汗以外の皮膚および呼気からの水分喪失をいいます。皮膚からの蒸散のみを指すという意見もあります。

「不感蒸泄」による身体乾燥:マスク着用が原因かも
今の季節は空気が乾燥しているだけでなく、室内の暖房器具によっても湿度が下がります。夏と違って汗をかかないので水分を失っている自覚がなく、その脱水症に対する警戒心も下がっています。その上、今年は新型コロナウイルス感染症が長引き、マスク着用によって喉が渇いていることにも気づきにくくなっています。つまり、マスクの着用が「不感蒸泄」による身体変化の感知を妨害し得ると言えるでしょう。

更にマスクを外すのが面倒でコップを口に持っていく回数が減り、脱水症状による頭痛、手先のかさかさ、口内のねばねば感、吐き気やだるさなど、様々な形で身体の異常を引き起こすこともあります。従って、乾燥した環境下で自覚のないまま皮膚や粘膜や吐く息からも水分を奪う「不感蒸泄」には十分な注意が必要です。

■マスク着用による身体乾燥の加速化:その対策
しっかりと水分を取ることです。常温安静時には健常成人で1日に約900ml(皮膚から約600ml,呼気による喪失分が約300ml)程度、水分を放出すると言われています。一日平均約1リットルの水分を放出しているという事なので、乾燥の激しい今の季節だと、それよりも多めに取ることをお勧めします。少なくとも1リットルの水分は意識してとるよう心がけましょう!

リスク②「息苦しさ」:マスク着用が引き起こす過呼吸

新型コロナウイルスを契機にマスクの性能は日々高まりつつあります。マスク性能の指標には、細菌ろ過効率(BFE)と微粒子ろ過効率(PFE)などがあり、最近はそれらの高い率を保有したマスク(主にPFE)が感染防止のため数多く使用されております。ただ、性能の向上により編み目が細かくなり、気道の抵抗を高めてしまい、息苦しさを引き起こすのも事実です。

マスク着用による息苦しさ:過呼吸になると脳血流が低下してボーッとする
マスクで息苦しくなり、ボーッとするという症状を経験したことがある方は7割弱に上ります(※1)。これは脳温の上昇も原因になりますが、息苦しさから過呼吸気味になってしまうことも要因の一つです。

過呼吸、つまり、浅く速い呼吸の難点は、血中の二酸化炭素が減ってしまうこと。血液はpH7.4前後になるよう厳密に保たれていますが、この主役が二酸化炭素です。その二酸化炭素が減ってしまうことにより、血液はよりアルカリ性に傾き、筋肉の動きをコントロールできなくなってしまいます。それで中大脳動脈という脳に栄養を行き渡らせる大きな動脈が収縮し、めまい感や気が遠くなったりする感じ、頭痛などを引き起こします。

過呼吸対策:自己確認と鼻呼吸
ソーシャルディスタンスや密への意識など、常にマスクを着用する新生活様式では様々なストレスが発生します。つい体をこわばらせて、浅く速い呼吸になっていないかチェックすることも必要です。普通、人の呼吸は、成人だと1分間に10~13回程度、これが15回を超えたら過呼吸に当たりますので、減らすよう心がけましょう。

その方法の1つが鼻呼吸の意識化です。鼻呼吸は横隔膜を動かし、ゆったりと深い腹式呼吸になります。それにつき、血液に十分な酸素が行き渡るでしょう。常にマスクを着用しているので最初は少し苦しく感じるかもしれませんが、徐々になれてきますので、意識して鼻で呼吸する事をお勧めします。

まとめ

新型コロナウイルスが収束するまで、マスクと寄り添う新しい生活様式はまだしばらく続くでしょう。そのマスク着用が起因する①身体乾燥②過呼吸には十分注意を払いましょう。毎日1リットル以上の水分補給(冬場だと1.5リットル以上がお勧め)をする、そして、1分間10~13回しっかり鼻呼吸をすることで、マスク着用によるストレスは大幅に低減すると思われます。

もちろん将来に対する不安感、外出制限によるうつ症状など、コロナ禍が生み出したストレスは他にも数多く存在します。先ずは、マスクに起因するストレスフリーから、それをきっかけに、他のストレスからも少しでも解消されるよう、今一度健康ケアを始めてみるのはいかがでしょうか。それでもなお何かかしらの不調や異変を感じる場合には、お近くの病院や関連施設で相談を受けてみるのもいいかも知れません。

(※1)「マスクに関する意識調査」株式会社プラネット


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