
2017年1月に「男女雇用機会均等法」が改正され、職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント(マタニティハラスメント)について、事業主に防止措置を講じることを義務付けました。
しかし、防止措置や防止対策といっても事業主として何をすべきなのかわからない方も多いと思います。
そこで今回はマタニティハラスメントについて、基本的な考え方から防止措置・防止対策を詳しくご説明します!
制度改正の概要
今回の改正では、解雇等の不利益取扱いの禁止に加えて、上司や同僚による就業環境を害する行為を新たに「ハラスメント」として整理し、企業に対してハラスメント防止のための措置を新たに義務付けています。
▽男女雇用機会均等法
不利益取扱い禁止
妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いをしてはならない
防止措置義務(新設)
職場において、妊娠・出産等を理由とする就業環境を害する行為をすることがないよう防止措置を講じなければならない
▽育児・介護休業法
不利益取扱い禁止
育児休業・介護休業等を理由とする不利益取扱いをしてはならない
防止措置義務(新設)
職場において、育児休業・介護休業等を理由とする就業環境を害する行為をすることがないよう防止措置を講じなければならない
マタニティハラスメント(マタハラ)とは
マタハラとは、職場において女性労働者が妊娠や出産、育児休業制度等の利用を理由に嫌がらせを受けたり、雇用において不利益な扱いをされたりすることです。
この定義により、嫌がらせの種類は「制度等の利用への嫌がらせ型」と「状態への嫌がらせ型」の2つがあります。
制度等の利用への嫌がらせ型の具体例
- 制度を利用したことを理由に解雇や退職強制、減給などをされる
- 制度の利用を相談すると、上司や同僚に制度を利用しないように言われる
- 制度を利用したことを理由に嫌がらせを受ける
状態への嫌がらせ型の具体例
- 妊娠したことを理由に社員からパートに切り替えられる
- つわりなどで体調が悪く業務に支障が生じたため、解雇や契約社員の更新を断られる
- 「忙しい時期に妊娠するのは避けてほしかった」などの言動
解雇や減給などの直接的なものだけではなく、妊娠や出産することをなじるなどの言葉や態度によるものも含まれます。さらには復帰後に、望まない配置転換やキャリア転換をされ、結果的に出世コースから外れてしまう「マミートラック」も懸念されます。
法律で義務付けられたマタハラ防止措置・防止対策
法改正により事業主に義務付けられた内容は以下の5つです。
- 事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
- 相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
- 職場におけるハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応
- 職場における妊娠・出産等に関するハラスメントの原因や背景となる要因を解消するための措置
- 併せて講ずべき措置
マタハラに関する内容やあってはならない旨の方針、出産・育児休業等の制度の利用ができること等を明確にし、従業員に周知・啓発すること。
マタハラを行った者に対する対処の内容を就業規則等の文書に規定すること、等。
相談窓口を設置すること。マタハラが発生した場合だけでなく、発生のおそれがある場合や、ハラスメントに該当するかどうか微妙な場合でも相談に対応すること、等。
事実関係を迅速かつ正確に確認すること。
被害者に対して適切な配慮をする措置を取り、かつ、行為者に対する措置を適正に行うこと。
再発防止に向けた措置を講ずること、等
業務体制の整備など、事業主や妊娠した従業員やその周囲の従業員の実情に応じ、必要な措置を講ずること、等。
相談者や行為者などのプライバシーを保護するために必要な措置を講ずること。
マタハラについて相談したことや事実関係の確認に協力したこと等を理由として不利益な取扱いを受けることがないことを従業員に周知・啓発すること、等。
マタハラについて詳しく理解できていない人も多いと思います。さらに妊娠や出産に関することは男性と女性とでは捉え方も違ってきます。
まずは研修などでマタハラに関する知識を共有することが防止の一環になるでしょう。
罰則について
マタハラ防止措置義務において「罰則」はありませんが、法律や指針に従わない事業主に対して厚生労働省は、指導・勧告をすることができます。さらに勧告に従わなかった場合、企業名が公表されることがあります。
マタニティハラスメントについて従業員全員がしっかりと理解し、安心して働ける環境を整備することは、企業の大切な責務です。まずはマタハラについての理解を深め、必要な措置を適切に講じるようにしましょう。
参照:厚生労働省「職場における妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント対策やセクシュアルハラスメント対策は事業主の義務です!!」