
2018年6月に「東京都受動喫煙防止条例」が制定され、同じ年の7月には「健康増進法」が改正されました。これにより望まない受動喫煙を防止するための取組みとして新しいルールが生まれました。
喫煙が体に与える影響が悪いことはもちろんのこと、たばこから発生する副流煙によって、たばこを吸わない人にも「受動喫煙」という形で体に悪影響を与えます。
受動喫煙によって引き起こされる体への害は、肺がん、急性心筋梗塞などの虚血性心疾患、乳幼児突然死症候群、子どもの呼吸器感染症や喘息発作の誘発など。さらに受動喫煙による死亡者数の推計は、受動喫煙による肺がんと虚血性心疾患の死亡数は、年間約6,800人。そのうち職場での受動喫煙が原因とみられるのは約3,600人にもなります。(厚生労働省の研究班「今後のたばこ対策の推進に関する研究」より)
改正された健康増進法と受動喫煙防止条例制定のねらいは、望まない受動喫煙を防ぐことにあります。
施設の種類により、施行される時期は異なってきます。
改正健康増進法の施行時期
2019年7月1日から学校や病院、児童福祉施設、市役所などの行政機関ではすでに施行されており、オフィスや飲食店などの場所では2020年4月1日から全面的に施行されます。
受動喫煙防止条例(東京都内)の施行時期
東京都の飲食店では、店内の喫煙状況を店頭に表示することがすでに2019年9月11日より義務付けられています。そして、オフィスや飲食店などの場所では2020年4月1日から全面的に施行されます。
〇企業ではどのような対策対応をすればいいのか?
屋外に喫煙所を設置することは可能ですが、原則屋内は禁煙となります。
ただし、一定の条件を満たすことで屋内に喫煙室などを設置することが可能です。
〈条件〉
- 出入口の風速を毎秒0.2m以上確保
- たばこの煙が漏れないように壁・天井等によって区画
- たばこの煙を屋外に排気
- 施設の出入口および喫煙専用室/加熱式たばこ専用喫煙室に法令により指定された標識の掲示等
▽屋内に喫煙専用室を設置の場合
喫煙専用室は飲食・会議等、喫煙以外の行為不可
▽屋内に加熱式たばこ専用喫煙室を設置の場合
加熱式たばこ専用喫煙室は飲食等可
※喫煙専用室および加熱式たばこ専用喫煙室には20歳未満の者(従業員を含む)を立ち入らせてはいけません
※経過措置として、脱煙機能付き喫煙ブースを設置することが認められる場合があります
〇施設の管理権限者の責務
※施設の「管理権限者」とは、一般的に建物の所有者や管理者またはテナントを経営している人を指します。
▽禁煙エリアに喫煙専用器具及び設備(灰皿・スモークテーブル等)を利用可能な状態で設置しない義務
▽喫煙室の構造及び設備を「たばこの煙の流出を防止するための技術的基準」へ適合するよう維持する義務
▽喫煙場所内への20歳未満の者(従業員を含む)の立入りを防止する義務
▽喫煙室の出入口及び施設の主たる出入口において喫煙場所を示す標識を掲示する義務
▽禁煙エリアで喫煙している者(喫煙しようとする者)に対し、喫煙の中止又は当該喫煙禁止場所からの退出を求める義務(努力義務)
〇義務を違反した際の罰則
義務に違反した場合、まずは都道府県知事から「指導」が入ります。この指導に従わない場合には、義務違反の内容に応じて「勧告」や「命令」等が行われてしまいます。
さらに、管理権限者がこれに従わない場合には、企業名などが公表される可能性もあります。それでも改善が見られない場合には、都道府県知事が地方裁判所に通知し、罰則(過料)が適用されることとなります。
2020年までに、企業は基準を満たした喫煙室を設置するか、あるいは社内を完全禁煙にするかの選択をしなければなりませんが、各種喫煙室の設置等に係る、助成金や税額控除など財政・税制上の制度が整備されているので活用することもできます。
喫煙・禁煙環境をどのように設定するかについては、衛生委員会などで審議し、的確に判断していくことが望ましいでしょう。
そして、喫煙ルールについては各都道府県、自治体個別の条例などもあるのでご確認ください。