
2019年5月に日本で初めて、職場における「いじめ・嫌がらせ」を防止するための「パワハラ防止法正式名称:改正労働施策総合推進法)」が成立しました。
それに伴い厚生労働省から「職場におけるパワーハラスメントに関して雇用管理上講ずべき措置等に関する指針」の素案が出されました。
今回はこの指針をもとに「パワハラ防止法」について詳しく解説していきます!
施行時期
パワハラ防止法の施行時期は、
大企業は2020年6月1日から
中小企業は2022年4月1日から(2022年3月31日までは努力義務)
職場におけるパワハラの定義
「職場のパワーハラスメントとは、職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの要素を全て満たすもの」としています。
さらに「パワーハラスメントの6類型」として、以下1~6のように、具体的な行為を分類し、法で定めています。
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- 身体的な攻撃:暴行・障害
- 精神的な攻撃:脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言
- 人間関係の切り離し:隔離、仲間外し、無視
- 過大な要求:業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害
- 過小な要求:業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと
- 個の侵害:私的なことに過度に立ち入ること
※1〜6は、パワハラに当たりうる全てを網羅したものではなく、これら以外は問題ないということではありません。
パワハラ防止法に違反した場合の罰則
パワハラ防止法には「罰則」はありませんが、場合によっては事業主に対して、助言、指導または勧告の対象となってしまいます。(労働施策総合推進法33条1項)
企業がとるべき対策
企業に課せられた義務は「雇用管理上必要な措置を講じること」とされています。
2019年11月に示された「職場におけるパワーハラスメントに関して雇用管理上講ずべき措置等に関する指針」では、以下のような取り組みを義務としています。
- 事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
- 相談(苦情を含む。)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
- 職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
- 1~3までの措置と合わせて、相談者・行為者等のプライバシーを保護すること、その旨を労働者に対して周知すること、パワハラの相談を理由とする不利益取扱いの禁止
パワハラに対する社内方針を明確化し、社内報や研修などで周知・啓発をするとともに、相談窓口の設置や被害者の支援・ケアなどの適切な措置を取ることが求められています。
これらの対策・対応については、外部へ委託することも認められています。
情報の安全性や不利な取り扱いを防ぐことはもちろん、社外の窓口であれば被害者が安心して専門家や資格のあるスタッフに相談ができ、一貫したケアが受けられるとして注目が集まっています。
今年の6月からパワハラ防止法によってパワハラを防止するための施策をとることが義務化されますが、施行前の現在からきちんと準備を進めていきましょう。
引用:職場におけるパワーハラスメントに関して雇用管理上講ずべき措置等に関する指針の素案