
2020年11月に厚生労働省から「情報通信機器を用いた労働安全衛生法第66条の8第1項、第66条の8の2第1項、第66条の8の4第1項及び第66条の10第3項の規定に基づく医師による面接指導の実施について」(*1)という通達が公表されました。これにより今まで直接対面で行っていた休職や復職、長時間労働などに対する産業医面談がオンラインで実施することが可能となりました。
新型コロナウイルスの影響によってオンラインやリモートを使用した働き方や生活様式に変わってきました。そのため、オンラインで実施する産業医による面接指導もニーズが高まっていますが、オンライン面談を実施するには一定の事項に留意する必要があります。
この記事ではオンライン面談における必要な要件をわかりやすくまとめています!
■基本的な考え
産業医が労働者と面談する場合、労働者とのやりとりやその様子(表情、しぐさ、話し方、声色等)から労働者の疲労の状況やストレスの状況、その他の心身の状態を把握し、その情報を元に必要な指導や就業上の措置に関する判断を行う必要があります。これらのやりとりはオンライン面談を実施する際にも適切に行われなければなりません。
ただし、産業医により要望があった場合には、直接対面の面談を行う必要があります。
■オンラインで面接指導を実施する医師(産業医)に関する4要件
厚生労働省より公表された通達によると次の①~④にいずれかの場合に該当していることが望ましいとしています。
- 面接指導を実施する医師が、対象労働者が所属する事業場の産業医である場合
- 面接指導を実施する医師が、契約(雇用契約を含む)により、少なくとも過去1年以上の期間にわたって、対象労働者が所属する事業場の労働者の日常的な健康管理に関する業務を担当している場合
- 面接指導を実施する医師が、過去1年以内に、対象労働者が所属する事業場を巡視したことがある場合
- 面接指導を実施する医師が、過去1年以内に、当該労働者に指導等を実施したことがある場合
■オンラインで面接指導に用いる情報通信機器に関する3要件
オンラインで面談を実施する場合、使用する情報通信機器にも満たすべき要件があります。
以下の①~③のすべての要件を満たしている必要があります。
- 面接指導を行う医師と労働者とが相互に表情、顔色、声、しぐさ等を確認できるものであって、映像と音声の送受信が常時安定しかつ円滑であること
- 情報セキュリティ(外部への情報漏洩の防止や外部からの不正アクセスの防止)が確保されること
- 労働者が面接指導を受ける際の情報通信機器の操作が、複雑、難解のものでなく、容易に利用できること
■オンラインで面談を行う際の実施方法等に関する2要件
オンラインで面談を実施する場合、その実施方法においても以下の要件をすべて満たしている必要があります。
- 情報通信機器を用いた面接指導の実施方法について、衛生委員会等で調査審議を行った上で、事前に労働者に周知していること
- 情報通信機器を用いて実施する場合は、面接指導の内容が第三者に知られることがないような環境を整備するなど、労働者のプライバシーに配慮していること
■緊急時の対応
オンラインで面談を実施する際の緊急時に対する体制の整備も必要となります。
情報通信機器を用いた面接指導において、医師が緊急に対応すべき徴候等を把握した場合に、労働者が面接指導を受けている事業場その他の場所の近隣の医師等と連携して対応したり、その事業場にいる産業保健スタッフが対応する等の緊急時対応体制が整備されていること
新型コロナウイルスの影響は収まるどころか、ますます拡がり、オンラインでの面接指導の需要がどんどん高まっていくことが想定されます。オンラインでの産業医面談の導入も検討してみましょう!
(*1)「情報通信機器を用いた労働安全衛生法第66条の8第1項、第66条の8の2第1項、第66条の8の4第1項及び第66条の10第3項の規定に基づく医師による面接指導の実施について」、厚生労働省